赤い狼 壱
すると、さっきより幾分見やすくなった景色。それに満足しながら前のめりになって観察を開始する。
でも、作業していた男の人の手がいきなり止まった。
あーぁ、もっと見たかったのに。
作業が終わったんだと残念に思いながらその人の手から視線を外す。
でも、その人は作業が終わったから手を止めたわけではなかったらしい。
さっきまで作業していた人は私を見て、頬を赤らめていたから。
「…見てたのバレました?」
少しの間、見つめあってテヘッと笑ってみる。もしかして邪魔だったのかもしれない。
「えっと、邪魔だったんならごめんなさい。でもどうやってやってるのか興味があってつい…。」
両方の人差し指の先を合わせて眉を下げる。
そうだよね。集中できないよね、そんなに見られたら。
「ごめんね、もう見ないから。」
本当は見たいけど、と心の中で呟いてまたその場に座り込んだ。あー、見たかった。
「迷惑なんかじゃないですよ!」
「へ?」
携帯で時間潰しでもしようと鞄の中を探っていると、その腕を掴まれて思わずマヌケな声が口から溢れる。