赤い狼 壱





「迷惑なんかじゃないです。もっと見てくれて構いません!でもあの…作業の手が止まったのは稚春さんが可愛かったからで……その、」



「何だって!?」




いきなりの爆弾発言に声を張り上げる。


かかか、可愛い!?この私が!?キャー!!可愛いって言われちゃった!




「可愛いの?この私が!」



「ち、稚春さんは可愛いですよ!」




調子にのって聞き返したらちゃんともう一回言ってくれた。やだこの子。素敵。



可愛いと言われる初めての体験に、はぅ…。と快感の余韻に浸る。



《SINE》最高。



この男の人のおかげで《SINE》の株が上がった。感謝しろ、隼人。




「ね、さっきの続き見させて!」




その場から立ち上がって男の人に詰め寄る。この人なら弄るところ見せてくれそう。



そう思いながら頼むとやっぱり、いいですよ、と快く許してくれた。


さっきの位置に戻ってまたバイクを弄り始める。




「ねぇ、それって難しい?っていうかその髪の毛、地毛?」




少し長めの焦げ茶色の髪の毛を触りながら目線はこの人の手元へと持っていく。


わー、ふわふわだ。


思ったより手触りがよくて歓喜の声を漏らす。




< 99 / 299 >

この作品をシェア

pagetop