クイヌキヤ
「占ってもらってこいよ、嫁さんと上手くいくかどうか」

一人の友人の思いつきに、他の友人たちも乗った。


友人たちにすすめられ、

彼は仕方なく友人たちと共に占い館への階段を降りていった。


店は思いのほか狭く、

薄暗い店内には気味の悪い紋章が書かれた掛け軸や、

牛なのか山羊なのか分からない像がたくさんある。


よくある占い館特有の胡散臭さは微塵もなかった。


部屋の一番奥には、ドアが一枚ある。


こっちの気配に気づいたのか、そのドアから一人の老婆が現れた。

老婆の顔はくしゃくしゃで、表情が読めない。


「いらっしゃい」


老婆は迷う事無く彼に声をかけてきた。

老婆は一目で「客」が誰なのかを理解したようだった。


「おいで」


老婆のしゃがれた声に自然と吸い寄せられるように彼は奥の部屋に入った。

友人たちは誰一人身じろぎ一つせずに元の部屋にとどまった。
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