クイヌキヤ
「お前さんの中には、2人の女性がおるのぉ。1人は最近知り合って、もう1人はずいぶん長い間会っとらん」


「なんでわかったんですか?」


彼はつい声に出して聞いてしまった。

酔っているのだろう、自分の息が熱っぽいのがわかった。


老婆は彼の質問に答えずに続けた。


「それで、お前さんを困らせておるのは、ずいぶん長い間会っとらん方の女性だ」


「そうです」


「お前さんはその女性のことを悔いておるな」


「そ、そうです」


「しかしな、本当に忘れたいのなら、その女性への悔いを消し去らなければならない」


「そんなことが出来れば、とっくにそうしています!」


彼は自分が興奮していることに気づいて、少し恥ずかしくなった。


「何があったか話してみないかね?」


老婆の言葉に、栓を抜いたシャンパンのように彼の中から言葉が飛び出した。
< 4 / 11 >

この作品をシェア

pagetop