桜の木の下で
「ああ。案ずるな」

刹那は優しいな。
でもこの刹那に対する気持ちはなに?

「いってらっしゃい。」

私はそう言って刹那に背を向けた。

そしたら不意に抱きしめられた。

「なぜないておる?」

「な、泣いてなんかないわ!」

「くく・・・おぬしは本当に愉快な女じゃのう。すぐに帰ってくる。」

「うん。」

「そうじゃ。帰ってきたらおぬしに伝えたいことがあるのじゃ。」

そう嬉しそうにつぶやく刹那。

「伝えたいこと?」

「ああ。だからわしの帰りを待っておれ。」

「うん。待ってる。」

そう答えると不意に刹那の気配が消えた。

ああ、行ったのね。


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