初恋フレーバー
「ところで春香、
もうこっちの生活には
馴れたか?」



「うん。
まだたまに道に迷うけどね」



春香は照れ臭そうに

笑った。



「そっか。
まぁ迷った時は
俺達の誰かに電話しなよ。
この辺の道はみんな
詳しいからさ」



「うん、そうする。
ありがとね…
みんなのおかげで
いつもより早く馴染めたし、
毎日楽しいよ」



「何言ってんだよ。
そんな改まって言われると
なんか照れるし。
それに春香ならどこでも
すぐに友達できそうじゃん?」


春香は少しうつむいた。



「そうでもないよ…
お父さんの転勤多いから、
いつも仲良くなる頃には
転校で…
だから最近はあんまり
仲良くならないように
してたんだ。
仲良くなればなるほど
別れが辛いでしょ?
だから…」



「そっかぁ…
春香も大変だな…」



淳は返す言葉が

うまく出てこなかった。



「でもね…」



春香は立ち止まった。



「やっぱり友達っていいよねっ」


そう言うと春香は

眩しいくらいの笑顔を

放った。



そして自転車に

またがった。



「じゃあ私こっちだから」



「おうっ…
じゃあまた明日…」



「うん。バイバイっ」



春香は顔の横で

小さく手を振ると

走り出した。



「気をつけてなぁー」



淳は去り行く春香の背中に

声を投げ掛けた。



その声に

春香は振り向くことなく

手を振り応えた。



淳は思った…



もしかしたら春香は、

またいつ訪れるか

わからない別れを、

恐れているのかも

しれない…っと…
< 11 / 16 >

この作品をシェア

pagetop