初恋フレーバー
店を出た淳は

千鶴を追いかけていた。



ゆっくりと走る

千鶴に追いついた

淳は呼びかけた。



「千鶴ーっ…」



自転車を止めた

千鶴は振り向いた。



「淳?なに?
どうしたの?…」



淳が横に並ぶと

千鶴は作り笑いを

浮かべた。



その瞳は少し

充血していた。



「俺も用事思い出してさっ…
途中まで一緒に
帰ろうぜ?」



「うん…」



千鶴は小さく頷いた。



「なぁ千鶴…
ほんとはこの後
バイトなんかないんだろ?」



頷く千鶴に

淳は言った。



「やっぱりな…
千鶴…久しぶりに
行くか?」



「えっ?」



2人が向かった場所…

そこは小学生の時に

3人がよく遊んでいた

小さな公園だった。



「懐かしいね…」



言いながら千鶴は

ゆっくりと腰を下ろした。



「おう。
中学になってからは
ここで遊ぶことも
なかったしな…」



淳もそっと横に座った。



「淳…用事って何だったの?」



「えっ?用事?
用事は…何だったかな?
あれ?忘れちまったなぁ」



とぼける淳の肩に、

千鶴は軽く拳を当てた。



「用事なんか
なかったくせに…
ありがとう…」



淳は黙って頷いた。
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