初恋フレーバー
「千鶴?何見てんだぁ?」



そんな2人の様子を、

千鶴は廊下の窓から

見ていた。



「ん?なんでもない、
なんでもない」



近寄ってくる淳を

押し戻すかのように、

千鶴は教室へと

入っていった。



「リンクと春香まだだよな?
2人とも遅刻か?」



「さぁね…
そのうち来るんじゃない?」



千鶴は席に着くと

溜め息をついた。



「ところで千鶴?
リンクとはどうなんだ?」



淳は青希の席に

腰掛けた。



「どうって?
別に何にも変わらないよ…
リンクには
何かありそうだけど…」



「えっ?何かって?」



「好きな人がいる…とか?」



淳は前のめりになり

千鶴を見た。



「マジで?
誰だよそれ?
まさか…春香…
じゃないよな?」



「さぁね…
私も聞いたわけじゃないし…
でもたぶん…」



千鶴の哀しげな瞳を見た

淳は拳を握り締めた。



「おはよう」
「おはよー」



青希と春香は

並んで教室に入った。



淳は席を立つと

平静を装った。



「よお、おはよう。
2人ともぎりぎり
セーフだな」



「うん。
家から出ようとしたら
自転車パンクしててさぁ。
でしょうがないから
走ってきてたら、
春香が通りかかったんだよ」



「そうそう。
汗だくで息切らしてたから
乗せてあげたの。
間に合って良かったねっ」



楽しそうに話す

2人を見て、

千鶴の表情は

さらに曇った。



そんな千鶴を見る淳の胸は、

やりきれない想いで

いっぱいだった。
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