「大丈夫、逢いたくなったら空を見上げて」
それでものこのことこんな、体育館裏の人気のないところについて来てしまったあたしは相当馬鹿なお人よしだ。
「お前なんていなきゃよかったのにな」
捨て台詞を吐いて去っていく3人が、あたしのモノクロの世界から遠ざかっていく。
かすむ視界にフタをした。
閉じたまぶたのうらに浮かぶ、無垢な笑顔。あたしに向けられたものじゃないなんてわかっていた。
それでも忘れられない。
たった一度でも、あたしに宛ててくれたあの手紙の存在を。
『あけましておめでとう。
本年もよろしくおねがいします』
たった2行のありきたりのメッセージ。
話したこともないあなたからの、1通の年賀状。
――……年賀状。
「…っ、どこ!?」
散らばった荷物をさらに広げて、大切な大切な年賀状を探した。
突き飛ばされた衝撃で広がった荷物の中にそれは見当たらない。
“彼”が一瞬でも、あたしを意識してくれた唯一の証拠。
寒い空気の中、真っ赤に染まった手で、ひたすらに一枚を見つけだそうとした。