「大丈夫、逢いたくなったら空を見上げて」
遠くもなく近くもないこの距離で、だれとも目が合わないようにクラス中の視線に常に神経を張り巡らせながら
それを彼にも悟られないように、ただ見つめているだけだった。時々、教科書を読むフリをしながら。
視線が混ざり合うなんて奇跡、あたしには起こらなくていい。
それがあたしにとっての当たり前なのだから。
もしも奇跡が起きてしまったら、あたしの日常から“当たり前”が消えてしまって
いつでもそれを求めたくなってしまう。そうじゃないと生きていけなくなってしまいそうな錯覚さえ生まれてくる。
そんなんじゃなかったはずだ。
誰がそんな子供みたいなことを望むもんか。少なくとも喚くしか脳がないあいつらのようにはなりたくない。
目が合いそうになるとすぐ視線を戻し、あたしは席を立つ。
もうあのグループが何を言おうが関係ない。あたしにはもう、聞こえることはないのだから。