玉依姫

平安京 清涼殿

「帝!」
「いかがした。騒々しい…」
「はい。それが…伊勢の神宮から、文が」

神祇官が帝に文を手渡す。
帝は文を開いて、目を見張った。

“内親王凛子様を、至急、伊勢神宮の童女として迎えたい。これは神勅である。なお、くれぐれも内密に。”

「な…!!」
「帝?」
「いや、……少し、一人にさせてくれ」
「はっ」

神祇官が去ってから、帝はまた文を開いた。

「(凛子はまだ五歳。巫女とするには早すぎる…。しかし、神勅だと言うのなら、致し方ない)」

帝は扇を鳴らした。すると奥から女房が現れた。

「志貴子の元へ行く。伝えよ」
「承りました」

帝は立ち上がり、皇后志貴子の元へ向かった。


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