玉依姫

玉依姫は、閉じていた目を開けた。

「ついに、祈りが…」

澄んだ声音が、祭壇の間に響く。

「姫?」

五角形の祭壇の間の縁にいた龍杞は、眉をひそめて玉依姫を見やった。
焔や虎太郎、玄夭も玉依姫を見ていた。

構わず、玉依姫は続ける。

「私の祈りが…我が君に届かなくなってしまった……」
「「「「!!!!!!!!!!??」」」」

守護神達は目を見張った。
まさか、もう力が途切れるとは。

激しい地鳴りが起こる。
反動で倒れかかった玉依姫を、風を操る虎太郎が支えた。

「姫…」

しかし、玉依姫は虎太郎を見ない。
いくら呼び掛けても、反応を示さない。







そう。

玉依姫の視力聴力は、失われていたのだ。


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