玉依姫

「……姫宮様、起きて下さい。姫宮様」

仮宮に着いた勒天達は、輿から降り、中に入った。
中には人がいた。
             クシロ シオミ
「お初にお目にかかります、久代 潮彌と申します。以後、見知りおきを」
「久代の、お方」
「はい。この鈴鹿の仮宮から伊勢神宮までお供いたします」

久代氏は代々伊勢神宮に仕える神官だ。

「では…姫宮様を、お願いできますか?荷を片さないと…」
「私がやっておきましょう。貴女様の方が、姫宮様もご安心なさる」
「……、では…お願い致します」

勒天は丁寧に頭を下げ、荷物を手渡した。

「……くずは」

くいっと凛子が勒天の袿を引っ張る。

「はい?何でしょう、姫宮様」
「あそぼ」
「良いですよ」

仮宮には、笑い声と雨の音が響いていた。

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