″好き″が言えなくて
「なお・・・と、くん」
病室の入り口から声をかけてみる
ゆっくりと顔を上げる直人くん。
やっぱり真っ赤だ。
光なんて映していない。
「・・・雛ちゃん」
・・・
沈黙が続く。
なんていえばいいのか分からない。
「直人くん、ありがとうね
お姉ちゃん きっと嬉しいと思う」
きっとそうだ。
こんなにもお姉ちゃんを愛してくれた人が
最後にそばにいてくれた。
私の方がお姉ちゃんと長い時間過ごしたけれど、
お互いに思いやった時間は
直人くんとの方が長いだろう。
「雛ちゃん ごめんね。
朋の最後 俺だったから。」
そうやって下を向く直人くん。
「違うよ、直人くんでよかったんだよ。
お姉ちゃんは直人くんが好きだったんだから。」
「そっか・・・よかった。」
私にいつもの笑顔でいった直人くんは
またお姉ちゃんの方を向いた
「朋香・・・大好きだった。
俺はこれからも朋香だけだから。」