あたしの愛、幾らで買いますか?
彼は怒っているの?

少し張り詰めた空気が怖くて、

あたしは朔羅の方を向く事が

出来なかった。


黙る朔羅。

少し手が震えるあたし。


「朔羅…?」


最初に沈黙を破ったのは、あたし。

朔羅は真っ直ぐ前を見つめている。

また彼はタバコに火を点ける。


あたしは、そこに居るに耐えられなくて


「…我が儘言ってごめんね」


そう言って彼にキスをする。

少し視線を絡めて、

あたしは車を降りる。


ドアをバタンと閉めて、

運転席の朔羅を見つめる。

彼は窓を開けることもなく車を走らせた。


「朔羅…」


あたしの微かな呟きは

彼の車の音にかき消された。




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