あたしの愛、幾らで買いますか?
あたしたちは


‘抱き合う’


という行為に夢中だった。

あたしにとっては薬みたいなものだから。


【安定剤】


そんな言葉がぴったりだった。


「笹井…」


そう、呟く唇を彼が塞ぐ。

深く深くあたしの唇を弄ぶ。


「歩美…」


あたしの目を見て優しく微笑む。

他の男は抱き合ってる時に

目なんて見てくれない。

だから、

温もりだけが


「一人じゃない」


と思わせる術だった。


だけど、

笹井は優しく微笑みをかけてくれるんだ。


あたしを妬む子達は笹井の何が欲しいの?


心?

視線?

唇?

全て?





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