あたしの愛、幾らで買いますか?
「おい」


あたしが部屋に入った時、

父に呼び止められた。

ふすまを開けないで、あたしは答える。


「なんか用?」


その答え方が気に入らなかったのだろう。

父はふすまを勢い良くあけて

部屋に入ってくる。


「なんか用って…
 そんな言い方で親に言っていいと
 思ってるのか?」


鬼のような形相で父はあたしの

Yシャツの胸ぐらを掴む。

父の背後では母が制止しようとしている。

しかし、

そんなものは意味が無かった。

あたしは簡単に投げ倒され

殴られる。

こんなの愛情だなんて

思えないし思わない。


―バシン!バシン!


頬を何度か殴られる。

口の中が切れたかもしれない。

うっすらと感じる

血の味。


殴られ終わった後

母は父をギュッと抱き締めるように

部屋から出て行った。

父が暴れないようにするには、

きっと

それしか出来ないのだろう。



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