あたしの愛、幾らで買いますか?
携帯を耳にあてて、

無機質なコール音を聞く。


『もしもし』

「…うん」

『どうした?
 珍しいじゃん、
 安藤が電話してくるの』


あたしが電話をした相手は笹井だった。

電話の向こうの笹井は笑っている。


「今日、学校で言いかけた事
 気になって…」


嘘。

ちっとも気になんかなっていない。

ただ、今は誰かの声を聞きたかった。

抱かれるのは、

やっぱり朔羅がいいから…

温もりは求められないから

声だけ求める。


『学校で言いかけた事?』

「うん…」

『あ~…』


彼は、そう言った後に

ケロリとした様子で言う。


『忘れた!』

「凄い気になるんだけど」

『つーかさ、
 お前元気なくねぇ?』

「そうかな?」

『なんかあった?』

「別に…」


あたしは気丈に振舞ってるから

バレないと思ったけど、

笹井には気付かれてしまった。



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