あたしの愛、幾らで買いますか?
「ていうかさ…」

『何?』

「校門で抱きついてたって…」

『あー。
 教室からたまたま見えた。
 ダッシュしてる、お前。
 したら、熱い抱擁ですよ』


見られてたんだ。

別にいいけど。

ただ、なんとなく恥ずかしい。

必死になっている、あたしを

見られたことが。


『お前、そいつの事
 本気で好きなんだな』

「…まぁ」

『でも、内心複雑とか?』

「なんで?」

『なんとなく』

「エスパーか
 お前は」

『なんとでも言え』


さっきまで冷たい風が胸の奥に

吹いていたのに、

今は少し穏やか。


『悲しくなったらいつでも言えよ?
 いつでも飛んで行ってやるよ。
 仕方ねぇから』

「仕方ないなら
 いらんし!」

『少し元気でたか?』

「元気だし」

『そっか…』

「うん」


あたしたちは少しの沈黙の後

どちらからともなく、電話を切った。




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