あたしの愛、幾らで買いますか?
他の男は、あたしの頭や髪を

撫でたりしない。

だけど、笹井はしてくれる。

それで、あたしは気体になって

蒸発しちゃうんじゃないかとか思う。

それ位、ドキドキする。

…これは絶頂感?


「…う!!安藤!!」


あたしは眠っていたみたいだ。

体の上には笹井のYシャツが

毛布みたいにかかっていた。

笹井はあたしの頬をペチペチと

叩いて起こす。


「…ん?」

「ん?じゃねーよ」


さっきまで

『歩美』

と言っていた笹井は、もういない。

ふと視線を上げると時計は、

『あと10分で授業始まるよ』

と知らせていた。


「弁当食ってないだろ?」

「…んー」

「‘んー’って…」

「だってぇ~…食欲無いんだもん」


食欲無いというか…

もう、満腹中枢が


「おなかいっぱい」


と言っているんだ。

満足しちゃったんだ。





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