あたしの愛、幾らで買いますか?
たくさんの車のライトが、あたし達を

抜かして通り過ぎていく。

あたしと笹井は少しの間を空けて

隣り合って歩いていく。

時折、笹井があたしを見ていることは

知っている。


―パッパー!


フラフラと歩くあたしにクラクションが

鳴らされる。


「危なっ」


そう言って笹井があたしの腕を引っ張る。

反動で彼の胸にぶつかる感じになった。


「大丈夫か?」


少しゴツゴツした男っぽい大きな手が

あたしの頭を撫でる。

朔羅の体温とは勿論違う。

だけど、

少しだけホッとする温かさだった。



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