あたしの愛、幾らで買いますか？

「なんだ、帰ったのかと思った」


吐き捨てるように言う

【女王様】もとい百合子。

あたしの机の上には

教壇の上にあったはずの

花瓶が置いてあった。

帰ったと思って花瓶置くかよ…

あたしは深い溜め息を吐くだけだった。

机の上にあった花瓶を

元あった場所へと戻した。

きっと普通の女の子なら泣くであろう。

深く傷つくんだろう。

だけど、

私の心は死んでるんじゃないかな。

そんな事、どうでもよかった。


「笹井くんにはどうやって近付いたの？
　ヤリマン」


自分の席に座るあたしに向かって

言う百合子は、

言い終わったと同時にあたしの机を蹴った。

思いっきり机を蹴られて、

お腹に激しく当たった。

意外な痛みに咳き込むしか出来なくって、

クスクスと笑う百合子の声が聞こえた。

百合子からの言葉の刃は慣れていた。

だけど、体にダメージを与えられたのは

初めてだった。


「あ。当たった？ゴッメーン」


反省なんて全くしない声色。

それどころか笑ってる。


「う…」


あたしの声はそれくらいしか出なかった。