あたしの愛、幾らで買いますか?
あたしが歩きながらボーっとしていたら

再び携帯が震える。


―ブーッブーッ


この震え方は電話だとわかったのは

少し時間が経ってからだった。

きっと数秒の事だけれど、

とてもとても長く思えた。


「もしもし」


あたしが電話に向かって話すと

相手は、こう言う。


『あゆ?どうした?
 学校は?』


朔羅の声を聞くだけで

泣きそうになる。

会いたくて堪らない。


「朔羅…
 会いたいよ」

『学校は?』

「今日は休む…
 なんか、体調が優れなくって」


体調なんて嘘。

ただ、

彼に会いたくて学校を休んだ。


『大丈夫?今、外?』

「うん。引き返してるんだ…」

『そっか』

「……」

『今日はゆっくりしてな?』


彼はそれだけ言ったら

電話を切った。


『ツー…ツー…』


電話の向こうで

電話を通した会話の終了を

知らせる音が鳴り響く。

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