あたしの愛、幾らで買いますか?
「歩美、
 あの二人付き合い始めたんだね…」


エリも充分すぎるほど驚いていた。

あたしはエリの言葉に

答える余裕なんかなかった。


笹井に彼女が出来たという事は

もう、

気軽に連絡を取ってはいけない。

気軽にキスをしたり

抱き合ったりしてはいけない。


少しだけ

目の前が霞んだ。

でも、大丈夫。

あたしには

朔羅が居るし。


大丈夫。

大丈夫。


笹井に抱かれていた時に聞いた


「好き」


という言葉は、やっぱり幻だったんだ。


この日、

あたしはどうやってカフェに辿り着いて

どうやって家へ帰ったかは

覚えていない。


ただ、

わかるのは

カバンの中に分厚い封筒が入っていた。

太ももに見覚えのないアザがあった。


あぁ、

あたし無意識のうちに

朔羅と会ってたんだ。

朔羅に抱かれたんだ。

< 246 / 484 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop