あたしの愛、幾らで買いますか?
鍵には部屋番号が書いてある。

302号室

彼を先頭にあたしが後ろからついていく。

あたしの視線は

自分のローファーが出たり

引っ込んだりするのを見ている。


―カチャ…ン


鍵の空く音が鳴り響いて、

ドアを開けた。

狭い玄関。

1枚薄いドアの向こうにはベッドが見える。

狭い空間にダブルベッドと、

大きめのソファとブラウン管のテレビ。

絶対に部屋の広さにあっていない

配置だった。


「ねぇ…」


男は急に優しく後ろから抱き締めてきた。

そして、耳元で囁く。


「ねぇ…シャワー浴びる?浴びない?」


正直、どちらでも良かった。


「どっちでも…。あなたは?」


普段より数倍甘い声であたしも言う。

今日は彼に従おう。

久々に笹井以外の若い人に

抱かれるのだから。






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