あたしの愛、幾らで買いますか?
だけど…

ズルイよ、朔羅。

そんなに真っ直ぐにあたしを見ないで…


「嫌なの?」


そんな優しい声で言わないで。

お願い…―。


「あゆ?」


惚れた方が負けって本当だね。

朔羅の柔らかい声の呪縛を

解くことが出来ない。


「……。
 嫌なわけないじゃん」


とても小さな声で、

搾り出すのが精一杯だった。


朔羅が走らせる車は、

道路の隅に止まった。

カチッカチッとウィンカーが

やけに大きく聞こえる。


朔羅は運転席のシートベルトを外し、

体をあたしの方へと向ける。


そして、

媚薬みたいな甘い声を

耳元で囁く。



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