あたしの愛、幾らで買いますか?
あたし達を乗せた小さな箱は

ひたすら走る。

鼻歌を歌う朔羅。

さっきの朔羅の言葉が

何度も何度もリフレインされる。

彼の言葉が耳にまとわりついている。


-傍に居たいって願うのは
 いつも、俺ばっかりなんだね?


朔羅が

そんな風に思ってくれること自体

あたしにとっては

奇跡のようなものだった。


結局、あたしは

彼の言葉を振り切れずに、

彼の言葉に対して

コクリと首を縦に振ってしまった。

嬉しいけど、やっぱり少しだけ不安。

彼の生活しているところに

足を踏み入れるという行為は…。


もしかしたら、

部屋には女の気配があるかもしれないし。

そこで現実を突きつけられたとしても、

あたしは、見て見ぬ振りできる?

今までなら出来たかもしれないけど…

今、出来る?

聞かなきゃいけないことも

聞ける?



…ねぇ、歩美。

聞ける?出来る?


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