あたしの愛、幾らで買いますか?
―キッ


ボーっとしていたら、

朔羅が住んでいるであろうマンションに

到着したらしい。

サイドブレーキを引く音がした。


「あゆ、降りるよ?」

「あぁ…
 うん」


想像していたより、

かなり高そうなマンション。

彼は靴をコツコツと鳴らして

あたしの前を歩いていく。

あたしは彼の後ろを

テテテと子犬のようについていく。

朔羅の歩くペースが

少しだけ早かったのだ。

その姿が面白かったのだろう

彼が声を出して笑っていた。

そして…


「あゆ、おいで」


両手を広げて待ってくれている。

あたしのさっきまでの不安や恐怖は消え

迷わずに彼の胸へと飛び込んだ。


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