あたしの愛、幾らで買いますか?
長らく湯船に浸かっていたのだろう。

少しだけのぼせてしまった。

朝からのぼせるなんて…

なんだか情けない。


ヨロヨロとバスルームを後にして

バスタオルで体を拭き、

髪の毛の水分を取る。

いつの間にか、

洗面所には女性用のスキンケア用品や

ヘアケア用品が増えていた。


あたしはヘアオイルを手に取り、

絡んだり、痛みやすい毛先になじませる。

ドライヤーの出番は、もう少し後で。


あたしは濡れた髪のままリビングへ行き、

彼はコーヒーを入れなおして飲んでいた。

彼曰く


『仕事前はブラックを飲んで
 気を引き締める』


ということらしい。


「長かったね~」

「湯船に長く居過ぎて
 のぼせちゃった」

「大丈夫か?
 水、飲みな」


心配してくれることが凄く嬉しい。

彼に少しでも

必要とされている気がして…―。


例えば、あたしが居なくなったら

彼は寂しがってくれるかな?

泣いてくれるかな…?



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