あたしの愛、幾らで買いますか?
「朔羅…
 かん…オフって書いてあるけど」


あたしは部屋の空気が

ピンと張り詰めたのを感じた。

布団の中で舌打ちをする朔羅。


「ふざけんなよ…」


彼は、そう言って

ガバっと起き上がった。


「…今日、お休みだったんだね」

「声かける前に見ろよ」

「……ご…」


‘ごめんなさい’

その言葉を言い切る前に

あたしの腹部に鈍い痛みを感じた。

声すら出ない。

痛くて痛くてうずくまるしか

出来なかった。


彼は突き刺さるような視線で

うずくまるあたしを見つめる。


あたしは少しだけ期待していた。

彼が優しく抱き締めてくれる事を…

でも、

今日は、うずくまるあたしが

見えないのかな?

あたしの横を通り抜けて

洗面所のドアを

乱暴に閉める音が聞こえた。

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