あたしの愛、幾らで買いますか?
彼の問い掛けに、あたしはただ

ひたすら首を横に振るしか出来なかった。


「喧嘩なんて…売ってない…」


やっと出た言葉だった。

その言葉は逆に彼を爆発させてしまった。


―バチッ


あたしの右の頬に衝撃が走った。

殴られた。

ソファから落ちてしまうほど

思い切り殴られたのだ。


「口答えすんなよ」


彼はあたしの髪を引っ張って

あたしを起き上がらせる。


「いっ…」


‘痛い’

その言葉すら上手く言えない。

口の中はじんわりと

血の味が広がる。


それを飲み込んだ後、

あたしは微かな声で言った。


「…ごめんなさい」


と。

それを聞いた彼は


「最初から、そう言っとけよ」


と冷たく言い放つだけだった。

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