あたしの愛、幾らで買いますか?
また、あたしは朔羅の黒い瞳に

吸い込まれそうになっていた。

頭がクラクラしそうだ。

どうして

今日出会ったばかりの彼は、

あたしにそんな事を聞くのだろう?

どうして、

少しだけ温かく感じるんだろう。


「あゆの目が‘寂しい’って言ってる」


彼はそう言って、あたしの額に

キスをした。


彼が言う言葉は胡散臭いと思えば、

幾らだって疑う事はできる。

でも、

何故か、あたしの目尻からは

熱いものが零れ落ちる…。

寂しい?

そんな感情は、

ずっと前に置いてきたはずでしょう?

なのに寂しいの?


「会ったばかりの人と…
 お金以外、他に何があるの?」


あたしは、零れる涙とは

裏腹な事を言う。

彼は、その言葉を聞きながら

髪の毛を愛しそうに指に絡める。




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