あたしの愛、幾らで買いますか?
時間通りに電車はやってきた。

あたしの携帯は、

今も沈黙を守り続ける。

あたしは、何の躊躇もせずに

それに乗り込む。

終電がなくなってから、

身動きが取れなくなるのは嫌だったし

タクシーで帰るなんて

贅沢な事はしたくなかった。


カバンにねじ込んだお金を

使う気にはなれない。

それを使ってしまったら、

朔羅の愛情が減っていくような気がして

使いたくはなかった。


結局、今でも

彼の愛を計るのは

何枚もの紙切れだった。

憎いはずの札束と

消えては増えるアザでしか

あたしは彼の愛を知る事はできない。


きっと

こんなの‘普通の愛’じゃないことくらい

知ってる。


だけど、

普通って何?

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