あたしの愛、幾らで買いますか?
きっと泣き疲れたのだろう、

気がついたらソファで眠っていた。

外はすっかり暗くなっていて

部屋も少しだけ肌寒かった。


あたしは暗くても慣れた手つきで

リビングのダウンライトを点けた。


ダウンライトの薄暗い光に

ダイニングテーブルが照らされる。

じっとそこを見つめても

朔羅は帰って来る事はなかった。


見るのは

朔羅の幻ばかりだった。


テレビのスイッチを入れ、

命が吹き込まれたように

画面の中では

彼のドラマやCMが嫌と言うほど流れる。


「ねぇ…朔羅…」


いつしか、あたしは

ダイニングテーブルに座る彼の幻に

語りかけるようになっていた。




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