あたしの愛、幾らで買いますか?
「ねぇ、朔羅?
 このCMの撮影大変だった?」


きっと他人が見たら妙な光景だろう。

誰も居ないリビングで

一人で見えぬ人物に語りかけるあたし。


「へぇ~…
 そうなんだ」


幻の彼は饒舌で色々な話をしてくれた。

あたしは嬉しくて嬉しくて

ついつい笑みが零れる。


「今日は、撮影ないの?
 …そっか。
 じゃあ、
 歩美が独り占め出来るんだね」


幻を見ているあたしは幸せ者だ。

とても閉鎖的で小さな小さな世界で

触れることの出来ない‘彼’と

暮らしている。


「…ご飯作ってくるね」


あたしは、そう言ってキッチンへ向かう。

今日のご飯は、何にしようか。

彼の大好きなクリームシチューにしよう。

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