あたしの愛、幾らで買いますか?
―ピピピ…


あたしは‘彼’の声を

インターフォン越しに聞きたくて

わざとインターフォンを鳴らす。

…だけど、無常にも

ピンポーンと鳴るだけだった。


あたしは郵便受けを開けて

ダイレクトメールや

取り忘れた新聞を鷲づかみ

オートロックを解除した。


解除された硝子の扉は左右に開き

あたしは吸い込まれるように

中へ入った。


エレベーターが来るまでの時間で

様々な封筒が入っていたから

それに目を通した。

殆どがダイレクトメールだったけれど

1通だけ違うものが入っていた。


‘安藤歩美様宛て’


綺麗な文字で書かれていた。

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