あたしの愛、幾らで買いますか?
俺は、好きだとか愛してるという言葉を

どうしても言えなかった。

ほら、目に見えないものは信じないからさ。

俺の気持ちをあゆに伝えるには

どうしたらいいんだろう?って悩んだ。

で、

悩んだ挙句出た結論がお金だったんだ。

どうやって測ればいいかわからなかった。

あゆは嫌そうにしていたけれど

俺はあゆの愛を買ったんだ。

何度も何度も傍に居てほしいって願った。

バカみたいに。

キモイよね。自分でも思うよ。

だから、

少しずつ少しずつ額が大きくなっていった。

俺には、そうやって愛を伝える事しか

出来なかったから。


そう、お金の他にも目に見えるものを

俺は残したよね。

ごめんね。

痛かったよね。

たくさん殴ってごめん。

今は、あのアザ消えたかな?

アザだらけのあゆを見る度に後悔した。

なんで殴ってるんだろう。

なんで愛してるのに殴ってるんだろうって。

自分で自分がわからなくて

余計に怖くなった。

俺が殴る度に、優しく抱き締めてくれる

あゆの事も怖くなっていったんだ。

一層の事、嫌いになってくれても

良かったのに。


俺はあゆの事を守りたくて

芸能界を去ろうとしたのに…

そんな俺があゆを痛めつけて

傷付けてばっかりだったね。

そんな俺があゆに

「愛してる」なんていう資格ないよな。

だけど、あゆ。

俺は少しでも君と一緒に長くいたいと

思った。

でも、一緒に居れば居るほど

俺の殴る回数は増えたよね。

一緒に暮らしてわかった。

俺、あゆと一緒に未来を歩む

資格なんてない。

俺、あゆを守れない。


…ごめん。


死ぬまで俺を恨んでいい。

むしろ恨んで欲しい。

「お前なんか嫌いだ」

そう罵ってくれてかまわない。



いつか、あゆは言ったよね。

覚えてる?

「あたし、愛され方も
 愛し方もわからない」

それは俺も一緒だよ。

俺達、愛に飢えていたのかな?

だから惹かれあったのかな?



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