あたしの愛、幾らで買いますか?
その言葉を声に出しただけで

一気に現実を帯びてきた。

あたしの涙は止まる事を

忘れたみたいだ。


「ここに居るのもなんだし…
 俺んち来るか?」


あたしは、その問い掛けに

肯定も否定もしなかった。

ただ、泣くだけ。

笹井は困ったように頭をかき

あたしの腕を引っ張り立たせた。


あたし達はいつかの時みたいに、

少しだけ間を空けて隣り合って

ゆっくりゆっくり歩く。


―パッパー!


あたしがフラついた時

クラクションが鳴った。


あ。

これで轢かれればいいんじゃない?


そう思った瞬間だった。


「危なっ」


そう言って、笹井はあたしの腕を引いた。


そういえば、前にも

こんな事あった気がした。




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