あたしの愛、幾らで買いますか?
ボーっとして笹井に

手を引かれて歩くあたし。

百合子に見られたら確実に殺される光景。

大丈夫。

ちゃんと百合子の下に

笹井を返すつもりだから…


―キィ…


笹井の家の門の開く音で気付いた。

いつの間にか笹井宅に到着していたのだ。


「どうぞ」


門を手で押さえ、

レディーファーストしてくれる笹井が

妙におかしかった。

玄関の鍵を笹井が開けて

笹井の後を追って、足を踏み入れた。


「…お邪魔します」


あたしは履いていたスニーカーを脱いで

玄関で立ち尽くしていた。

どうしたらいいかわからなくて。

その光景がおかしかったのか

笹井が笑いながらこういう。


「変に緊張すんなよ。
 襲ったりしないから」


笹井のくしゃっとなる笑顔を

久々に見た。


「…約束ね?
 触ってもダメだからね?」


あたしは意地悪く笑って見せた。




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