あたしの愛、幾らで買いますか?
あたしは膝を折り、小さくなって

ひたすら泣いていた。

しばらくしてから、あたしの右側が

少しだけ暖かくなった。


「…朔羅?」


無意識だった。

隣に居たのは朔羅じゃなくて

笹井だった。

笹井は困ったように眉を下げて


「ごめん、俺で」


そう笑った。

笹井は、あたしの髪を撫でて


「愛されてたんだな。」


そう言った。


「…わかんない。」

「わかんないことあるか。
 お前は、あいつに心から
 愛されてたんだろう?
 他人の俺が、そう思うんだから…
 だから、
 ‘愛されてる’
 その事実は変わんねぇだろ?」

「じゃ…
 なんで?
 なんで、朔羅は居なくなったの?
 一緒に居たらダメになるなんて言うの?
 愛されてるなら…
 傍に居てくれたっていいじゃない」


笹井は優しくあたしの頬を伝う涙を

指で拭いながら、微笑みながら言った。


「よく読んでみろよ。
 お前を大事に思ってるから、
 お前を傷付けたくないから、
 あいつは消えたんだ。
 安藤は納得してなくても…
 お前の幸せを願って居なくなったんだ。」


笹井の言葉は不思議だ。

何でか、あたしの心の奥にあった

氷の棘みたいな物が

溶けていく感じがした。


「だから、
 お前はすぐにあいつを
 忘れなくたっていい。
 ゆっくりゆっくり幸せになればいい。
 神様は、お前を見放すなんてしねぇよ」


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