あたしの愛、幾らで買いますか?
「そのまま、その言葉返してあげる」


あたしの一言で百合子の肩に

力が入ったのがわかった。


‘殴られる’


と思ったけれど、

あたしは視線を外さなかった。

殴りたかったら殴ればいい。

嫌われ役は慣れているし、

殴られて悲しいなんて感情は

沸いてこないから。


―バチンッ


ジンとする、あたしの右頬。

頬の一部だけ痛いのは、

恐らく百合子のシルバーリングが

当たったのだと思う。


「……」


クラスメイトは何人か教室に居るのに

誰も居ないような静けさ。


―ガラッ


だから笹井が開けたドアの音が

やけに大きく感じたんだ。




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