あたしの愛、幾らで買いますか?
「え?なに?
 今日、なんかのお祝い事?」

「んまー、俺的には?」

「えー?何?」

「ママ、なぁに?
 それなぁに?
 えみも欲しいーっ」


濡れた手をエプロンで拭いて

その小さな箱を開ける。

中に入っていたのは、

華奢なデザインの指輪だった。



「歩美、10年前の今日
 俺が歩美にプロポーズしたんだ」


すっかり忘れていた。

あの日から、

もう10年が経っていたのだ。

凄くあっという間な10年だった。


「パパー、ぷろぽーずって何?」

「えみもキラキラほしいー」


子供達は口々に声を上げる。

あたしの目には思わず涙が

薄っすらと溜まる。



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