あたしの愛、幾らで買いますか?
「もしもし?」

『おー安藤?』


電話の主は笹井だった。

笹井が携帯にかけてくる事が

滅多にないから、あたしは驚いた。


「何?」

『お前、今、暇?』

「何で?」

『会いたいから』

「‘ヤりたい’の間違えじゃないの?」


あたしは笑いながら

最後の一言を言った。

それに対して笹井は否定もしなくて、

かといって肯定をしたわけでもなかった。


『忙しいならいいけど』

「家まで着てくれたら考える」


何気なく言った一言だった。

時間は11時近く。

笹井の最寄り駅は、

あたしの家から2個も先だ。

来るわけもないでしょ。


そう思ったあたしは、

気にも留めず、シャワーを浴びて、

髪を乾かして、ベッドへ潜った。





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