あたしの愛、幾らで買いますか?
両親が寝ているから、

起こすまいと忍び足で部屋へ入る。

カーテンを少し開けて、

窓の外を見る。


笹井は、まだ居る。

あたしの部屋を見上げている。


「早く帰りなよ」


窓を開けて吐き捨てるように言った。


「安藤、お前は一人なんかじゃないよ。
 エリだって俺だって居る。
 少なくとも二人は居るんだ。
 だから、
 そんな目すんな。
 ‘生まれてこなきゃ良かった’
 そんな後悔する目すんなよ」


真剣な眼差しで、あたしに語りかける。

自転車に跨った笹井が、

少しだけスーパーマンに見えた。

真っ直ぐな言葉が胸に突き刺さった。


あたしは、笹井の言葉を

素直に受け入れられるほど

可愛い女にはなれなかった。


「でも、
 笹井が、そんな事言ったって
 誰かが、ずっと傍にいてくれる保障
 なんて、どこにもないじゃない。
 適当な事言わないでよ」

「約束する。
 俺は、お前を一人にしないよ。
 友達として守るよ」

「勝手にすれば?」


あたしはピシャンと乱暴に窓を閉める。

あたしを一人にしない?


「嘘つき…」


自転車を漕いで去る

笹井の背中を見ながら呟く。




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