あたしの愛、幾らで買いますか?
朔羅は車で来ていた。

あたし達は、それに乗り込む。

電車の中で出会った

あたしと朔羅。

助手席に乗って、運転席に座る

朔羅の横顔に見入ってしまう。


「あゆ?」


あたしの視線に気付いた朔羅は

不思議そうに、あたしに声をかけてきた。


「ん?」

「シートベルト」

「あ…」


朔羅の瞳に吸い込まれそうになるのを

堪えて、あたしはシートベルトを締める。

朔羅の車のBGMは洋楽。

男性のコーラスグループ。

あたしが知らないアーティストだ。


「元気だった?」

「ん…
 朔羅は?」

「俺?」

「うん」

「それなりに」

「そっか…」


上手く言葉が出ない。

何を話せばいいのだろう。

勢いで車に乗ったけど、

何の為に、どこへ向かっているのだろう?

あたしには見当がつかなかった。






< 84 / 484 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop