あたしの愛、幾らで買いますか?
朔羅が煙草を1本吸い終って、

携帯灰皿で煙草の火を揉み消した。

あたしは、それでも真っ直ぐ

朔羅を見つめた。


太陽はすっかり海の中に消えて、

あたりは暗くなっていた。

きっと、

朔羅には、あたしの瞳に溜まる涙なんて

見えないだろう。


「ねぇ…
 朔羅…
 何か、言ってよ」


心なしか、あたしの声は震える。

あたしが、

朔羅の事を知ろうとするのは

いけない事なのかな?


あたしの頬に一筋の涙が零れた。

そして、

甘い甘い香水の匂いが

あたしを取り巻く。


朔羅に抱き締められていた。


朔羅の背中に腕をまわして、

ギュッときつく抱き締める。


「あゆ…
 俺を一人にしないで」


彼は、そう呟いた。





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