あたしの愛、幾らで買いますか?
初めて言った。

こんな言葉を。

暗い中で波の音が聞こえる。

波の音が大きく聞こえる気がした。

そして、

朔羅が静かに口を開いた。


「しないよ。」


その言葉だけだった。

だけど、

あたしは、それで満足だった。

もしかしたら、

あたしは、

ずっとこの言葉を

言いたかったのかもしれない。


男と約束なんてしたことなんてなかった。

それは拒絶されたくなかったから。


あたしが求めて、

相手が拒絶をしたら…?

あたしは何も出来なくなる。

だから、あたしは

見知らぬ人と体を重ねる。

ほんの少しの温もりの為だけに。




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