あたしの愛、幾らで買いますか?
あたし達は、波の音を聞きながら

お互いの温もりを確かめるかのように

再びきつく抱き合った。

夏になりかけの今だけれども、

潮風は少しだけ冷たい。

半袖のYシャツにニットのベストしか

着ていない所為か、

朔羅がとても温かく感じる。


――朔羅は幻なんかじゃない。


それが嬉しい。

その事実がこんなにも嬉しいなんて。

初めてだよ。

涙が出る位に嬉しいよ。


「朔羅…」


今日だけで、何度呟いたのだろう。

胸が少しだけ高鳴る。


「朔羅…」


そして、

あたしは、こう彼に言う。


「…好き」




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