河童と恋をした<短>
薄が揺れて
私一人の通学路。
両脇には田んぼ。
空は夕暮れで、綺麗だ。
「なんか私、今超絵になってる」
独り言だ。
気にしないで欲しい。
ただ、このシチュエーションに、紺のセーラー服を膝下丈で着こなす私を客観的に見て、そう思ったのだから仕方ない。
薄はさらさらと揺れ、秋の香を溶かしている。
「家帰ったら何しよっかなぁ」
独り言が、多いのだ。
一緒の方面の友達がいないのは寂しい。
一人だからこの呟きが不自然になってしまう。
もう一人いたら、辛うじて、独りよがりな会話になる。
「誰かいないかなー」
会話がしたくなった。
かと言ってこんな所、誰もいるわけがない。
…いるにはいるが、おばあちゃんやおじいちゃんは畑仕事に夢中だ。
「いるわけないっかー」
そもそも期待はしてないけど、つまらなくて……
『う……』
「!?」
恥ずかしながら、ビクついてしまった。
「な、何…」
呻き声が、聞こえた。
あの薄が茂っている所からだろうか。
「………」
注意深く近づくと、
『うぅ…』
呻き声は近くなった。
間違いない。
あの辺りだ。
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