河童と恋をした<短>


しかし、ある日、異変が起きた。


『河童ー?』


薄を抜けた小川。

いつも定位置の石に腰掛ける河童の姿が見当たらない。


サラサラサラ


風も吹いてないのに、一部分だけ薄が不自然に揺れる。


「河童?」

恐らく、河童だろう。

薄い色の薄では、河童の深緑は隠せない。


『お前は…何故俺なんかといるのだ』

薄から出てこない河童は、隠れながら話しだす。


「楽しいからに決まってるじゃん」

『しかし…昨日の奴といるのも楽しそうだったぞ?ならば奴といればいい。奴は俺と違って容姿が美しいではないか』


…………

昨日の奴?


「…ぷっ!」


なんだ、そういう事か。

『な、何を笑っている!俺は真剣にだなぁ…!』

「河童っ」

『く…!来るな!』


河童がいつまでも出てこないから、私から薄の中へ飛び込んでやる。

「何…かぶってんの?」

そこにいた河童は、いつもの河童ではなく。

お面をかぶっている。


「あ、慎一君のお面…?手作りじゃん」

『奴は慎一君と言うのか』

ぶっきらぼうに言う河童が、私にとったら愛しくて愛しくてしょうがない。


「河童、良い事教えてあげる。


慎一君はね、従兄だよ」

『……なんだとっ!』


「勘違いしてお面までかぶるなんて……」


『仕方ないだろう!俺はこんなに醜くて、不気味なんだ……!』


私は河童のお面を外す。

『やめろ…!』

「私はね、この色好きだよ?黒いのも好き。お皿も好き。ヌメヌメも好き」

一つ一つ触れながら言うとこ、河童は"趣味の悪い!"だなんて悪態づきながらも、仕草から照れてるのが分かる。





「だから、醜いなんて言わないで。
私は、そのまんまの河童が大好きよ?」


『変わった奴だ…』




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